いちまつのふあん

いちまつの不安 / いちまつのファン

一年。

 昼過ぎ、恐らく休憩時間であろう母からLINEがきた。

今日はポチの命日だね。拝みにいった?

そうだ。今日か。今日だったのか。

 

 ポチは僕の家で飼っていた犬である。

僕が小学4年だか5年生の頃から飼い始めた雑種の犬。

(“ポチ”は仮名。つらいじゃん、そのまま書くと。)

 

 忘れるわけがない、忘れないだろうと思っていたけど忘れていた。

言い訳をさせてもらうと、自分の誕生日とポチの命日が近かったため、

自分の誕生日のあとが命日だと勘違いしていた。前だった。ごめん。

 母からLINEがきたあと、自室に保管してある、ペット霊園で購入した

お骨袋(骨壷を包む袋)に霊園のスタッフが記入してくれた日付を確認する。

確かに一年前の今日である。疑ってごめん。

 

 そのあとも母と少しやり取りをしたんだけど、

年に一回くらいは行ってあげたら。

せっかくお墓もあるんだし。花でも買って。

ポチも喜ぶよ。

と言われ、「ポチも喜ぶよ。」の部分でポチが走ってる姿を思い出して泣きそうになった。

 

 身支度をしていざペット霊園へ。

 

 一年前、僕はまだアルバイトではあるけど働いていた。

母からの留守電に気付き、それを聞くとポチが危篤らしい。

店長に事情を説明して早めに帰らせてもらった。

 僕が帰宅する頃にはもう息も絶え絶えで、

もう長くないだろうなと直感で思った。

夜も遅く動物病院も閉まっていたので家で様子を見ることにした。

明朝まで生きていてくれたら病院へ連れていこうと思っていた。

 しかし、日付が変わる頃に亡くなった。

部屋でずっと様子を見ていたけど、

だんだん呼吸の間隔が苦しそうに変わってきていて

最期は咳を一つして息を引き取った。

 

 それから日が変わっても涙は止まることはなかった。

しかし、このままでもどうしようもないので、

溢れ出る涙をこらえながらペット霊園に電話して火葬や納骨をお願いした。

 霊園に着いてからお経を上げてもらい、

これでもう本当に最後なんだと思うと、

スタッフの目もはばからず自分でも驚くぐらい号泣した。

 火葬も済み、納骨もしてもらって帰宅したけど、その日は結局一日中泣いていた。

 

 

 あれからもう一年なんて。

早いな。あっという間だ。

 車を走らせポチの事を考えうっすら涙を浮かべながら霊園に向かった。

道すがら購入した花を手向けているところで白い猫がすり寄ってきた。

慰霊碑の前で拝み終えたあと、甘えん坊の猫を撫でた。

 この様子を見ていたらきっと怖い顔して大きな声で吠えるんだろうな。

あいつは猫が嫌いで見かける度に吠えていたから。

そんなポチの姿を想像して苦笑しながら霊園をあとにした。