陰口と独白

 僕は人の陰口を叩くのは悪いこととは思わない。

というか人間関係が築かれる場では仕方ないことだと考えている。
 
 ただしこれは「陰口」(=“その人の居ないところで語る、その人に対する悪口”だと定義している。)に賛同しているのであって、
人に向かって暴言を吐くことを賛同しているのではない。
 
 
……とまぁ、こんなこと言ってるけど、
なんでこんなこと書こうと思ったのか。
それは陰口を聞かされたからである。
 
 今朝、通学途中にクラスメイトと会ったので、
訓練校までの道すがら、残り少ない訓練校生活の話をしていたときのことだ。
またしても話がどう繋がってそういう話になったのかを忘れてしまったが、
Aさんについての不満を、悪口を僕に伝えてきたのだ。
内容については触れないでおくが、僕も一部賛同出来る内容ではあった。
 ただ、彼の話を聞いていると、僕に話す前に他の人にも
Aさんに対する陰口を他の人にも話していたようで、
多数が彼の意見(悪口)に共感し、愚痴大会のようになったらしい。
そこでは他の人も便乗して彼よりえげつない発言をしていたと聞いた。
 
 そう、こういうところだ。
なんだかなぁ……。っていう。
人間の醜いところだ。
聞きたくない、知りたくなかったことだ。
自分もよくしてしまいがちな醜悪なこと。
 
 その話をしている時の彼はとても生き生きしているように見えた。
話を共有出来る相手がいて、日頃の鬱憤を発散しているようで。
 きっと彼らと同じような立場になったとき、僕もそんな晴れやかな表情をしてるんだろうな。
 
 この話を聞いてしまってから、Aさんの陰口を共有し合った人たちを見る目が否が応でも変わってしまうな。そういう見方をしていたんだ、と。
 そして、彼の発言から察するに、きっとどこかで僕に対しての品評会もしているんだろうと思わせたことが残念だった。
 
 冒頭でも述べたように陰口は陰でおこなうものであるから僕は許容出来るのであって、
それが本人にも伝わるようなものであれば、ただただ不快なものである。
 今回の彼の発言はAさんへの“陰口”でありながら、
僕に対する、かなり婉曲的な“悪口”ともとらえることが出来た。
(話が、解釈が飛躍して暴論のように感じるかもしれないけど……。)
 
 朝からこんな話を聞いて、こんな思想を巡らせ、げんなりしながら、
尋ねても明言しない含みを持たせた彼お得意の自虐風自慢にお腹いっぱいになりながらも、辟易した様子を見せぬようヘラヘラ顔で相槌を打つ僕のある朝の出来事でした。